「相続の相談を誰にすればいいか迷うけど、税理士や弁護士に頼めば確実でしょ?」と安心していると思わぬ落とし穴が・・・?!
この記事では以下の内容についてお話ししていきます。
- 相続対策は誰に相談すればよいのか。
- 相続をめぐっては多くの企業や専門家がビジネス目的でかかわろうとしているが、彼らは自分の利益優先なので注意が必要である。
- 専門家もそれぞれ得意分野があり、資格をもっているからというだけで信用するのは危険。
それではまりましょう。
【相続の相談は誰にする?】ケースその1.地元のJAに相談したところ・・・
千葉県北部で農業を営むDさんは長年、健康に自信がありましたが、60代後半になって大きな病気をしたことをきっかけに、相続対策について考えるようになりました。
以前、父親が急に亡くなったため、どこにどんな資産があるのか確認したり、親族間で遺産分割を話し合ったりするのに大変な思いをしたからです。
相続を誰に相談したらいいのか迷ったDさんは、とりあえず昔から付き合いのある地元のJAに相談しました。
すると、ある大手ハウスメーカーを紹介され、全額借入れでアパートを建ててはどうかと勧められたそうです。
しかし、Dさんの所有する農地の多くは最寄り駅から15分以上かかる立地です。
不安が頭をよぎりましたが、大手ハウスメーカーの営業マンが「当社が家賃保証をしますから安心してください」としきりに言うので、「まあいいか」と納得してしまいました。
それから10年。
新築のうちはなんとか全室埋まっていたものが、いったん空くと次の入居者がなかなか見つからないようになり、ハウスメーカーから家賃保証の金額を引き下げてもらえないかという話も出てきています。
不信が募ったDさんは最近、相続税に詳しい専門家を探し、このアパートの客観的な状況についてアドバイスを求めました。
すると、相続税対策としての効果より資産の目減りのほうが大きいといわれてしまいました。
損は出るけど、いまのうちに思い切って処分してしまおうか、悩んでいるところです。
【相続の相談は誰にする?】ケースその2.相続ビジネスにご用心
相続をめぐっては大きなお金が動くため、さまざまな企業や専門家がビジネスチャンスと見てかかわろうとします。
彼らが提案してくるものの中には、相続対策として不必要なものや、時にはマイナスをもたらす「果に終わるものも少なくありません。
例えば、ハウスメーカーや建設会社は、アパートや賃貸マンションの建築を勧めてきます。
彼らにとっては、建物の建築工事を受注することが狙いです。
そのため、入居者が集まりそうもない立地でも、「節税対策に」としつこく営業してきます。
なかには、家賃保証を大きくアピールする会社もあります。
「家賃を保証してくれるなら安心」と思うかもしれません。
しかし、契約書をよく見ると、小さな文字で「2年ごとに保証家賃を改定する」とか「経済環境によって契約条件を見直すことがある」といった条項が記されていることがあります。
そもそも、何十年間も同じ賃料を保証してくれることなど常識的にありえません。
賃料の見直し(値下げ)に応じないと、家賃保証の契約を解除されることもあります。
家賃保証はあくまで、建築工事を取るためのエサといったら言い過ぎでしょうか。
Dさんのように、金融機関やJAがハウスメーカーなどを紹介してくるケースも少なくありません。
金融機関としては、アパートや賃貸マンションを建てる工事費や投資用物件の購入代金を貸すのが目的です。
金融機関は近年、貸出先がなくて困っています。
住宅ローンも有力な貸出先ですが、競争が激しいためあまり金利を高くできません。
それに比べると、アパートや賃貸マンションの工事費などはまだ金利を高めに設定できるので魅力的なのです。
また、地主や都市農家にローンを貸す場合、必ず土地を担保にとります。
万が一の場合、それを処分すればローンはほぼ確実に回収でき、倒産リスクのある企業向けの融資より安全です。
金融機関やJAの営業担当者には融資額などのノルマがあり、それを達成するのに一生懸命です。
不動産をたくさん持っている地主や都市農家はそういう点で、絶好のターゲットといっていいでしょう。
一方、地主や都市農家の中には、「工事費や購入代金を全額、借りられるなんてラッキー」と考える人もいるようです。
そういう人は、自己資金を使わないので得をした気になり、「9年後にローンの返済が終われば、あとは家賃が入ってくるだけ」と単純に考えたりしています。
しかし、毎月の家賃収入はそのままローンの元本と利息の返済に消え、手元にはほとんど残りません。
また、新築当初はよいとしても築10年をすぎてくると建物の補修やメンテナンスにコストがかかるようになってきます。
Dさんのケースと同じく、周辺のほかの物件との競争もあるので築年が経つと空室が増え、賃料も下げざるをえません。
さらにいえば、借りたローンが変動金利の場合、将来の金利上昇で家賃収入だけでは返済に不足する可能性もあります。
【相続の相談は誰にする?】ケースその3.銀行の相続手続きワンストップサービスの実カは?
銀行は最近、相続に関するさまざまな手続きを代行するワンストップサービスに力をいれています。
契約しておくと、相続が発生した際、相続人の確定や遺産の洗い出しと評価、
さらには提携税理士を使っての申告納税まですべて代行してくれるというものです。
実際、「相続のことは○○銀行に頼んであるから大丈夫。心配ないよ」という話を聞きます。
しかし、本当にそうでしょうか。
銀行が行うサービスなので怪しいわけではありませんが、手数料が遺産総額の1.5%前後と高めです。
書類の収集がメインなので、この値段は驚きです。
遺産総額が1億円なら190万円くらいになります。
しかも、この手数料には税理士報酬は入っていません。
相続税の申告納税については、銀行が提携している税理士や税理士法人があたります。
基本的に相続税に詳しい税理士や税理士法人なのですが、やはりそのコストは高めです。
しかも、時として不動産の評価額が下がる要因を見逃していることがあります。
これまで長年の付き合いがある銀行だから安心、とは決していえません。
【相続の相談は誰にする?】ケースその4.「税理士に頼めばなんとかなる」と思ったら大間違い
誰しも「税理士は税金のプロなのだから、相続税についても詳しいだろう」と思うでしょう。
しかし、相続税に精通し、相続税の申告実務について知識も経験も豊富という税理士は、ほんのわずかしかいません。
いま日本には7万7000人ほどの税理士がいます。
一方、1年間に発生する相続税の案件(被相続人ベース)は、2015年には10万件超に急増(前年までは8万件ほど)。
単純計算では、税理士一人あたり1件にもなりません。
これは平均なので、相続税の案件をほとんど扱っていない税理士も少なくないはずです。
考えてみてください。
みなさんも、年に一度やるかやらないかの仕事をきちんと覚えているでしょうか。
マニュアルを見直したり、以前の報告書を見直したりしながらやって、
それでもミスが起こるのではないでしょうか。
税理士の仕事も、それと同じです。
ただ、こうしたことを正直に説明する税理士はほとんどいません。
所得税や法人税でいつも付き合いのある顧客から相続税の申告を頼まれた場合、「相続税はやったことがないのでちょっと」などと言って断るより、とりあえずは「分かりました」と引き受けるのです。
そして、通達や解説書を調べながら、なんとか申告を行います。
また、万が一ミスがあれば信用問題になるので、相続税を合理的に抑えられる方法があっても、「税務署が否認するかもしれないのでやめておきましょう」と、なんでもかんでも慎重になりがちです。
相続について税理士に相談するなら、必ず相続税に詳しい税理士かどうかを確認しましょう。
それには、毎年何件くらい相続税の案件を手掛けているのか聞くのが一番簡単で確実です。
目安として、年間10件ほどしか相続税の申告をしていないような税理士や税理士事務所には頼むべきではないと思います。
【相続の相談は誰にする?】ケースその5.弁護士の出番はトラブルが起こってから
地主や都市農家のみなさんの中には、相続にあたって弁護士に相談するケースもあるでしょう。
弁護士は法律の専門家です。
依頼人の代りに相手方と示談や調停の交渉をしたり、裁判の手続きを行ったりするのは、弁護士資格がなければできません。
逆にいうと、弁護士の出番は基本的に、法律上のトラブルが起こってからです。
もちろん、遺言書のチェック、相続対策についての法律上のアドバイスなどを頼むこともできますが、相続についてのこうした事前相談は司法書士で十分なことも少なくありません。
また、弁護士にも得意分野、専門分野があります。
離婚や相続などの民事事件しか扱ったことのない弁護士が、企業のM&Aの案件をうまく処理することは難しいでしょう。
逆もまたしかりです。
私は相続をめぐるトラブルを数多く見てきましたが、正直なところ弁護士を入れず、親族同士で話し合って解決したほうが、時間も費用もかからないと考えています。
どちらかが弁護士を立てると、相手も同じように弁護士に依頼し、対立がむしろ抜き差しならないものになるのが一般的です。
繰り返しになりますが、弁護士の出番は「トラブルが起きてから」です。
そして、訴訟が短期で解決するより、裁判が長引いたほうが彼らの報酬は増えます。
法人同士のトラブルには弁護士は不可欠でしょうが、個人の親族間のトラブルに関しては、話し合いとお金で解決するほうが合理的だと思います。
信頼できる相談相手の選び方
専門家はそれぞれの分野の資格者ですが、単に資格を持っているからといって信用するのは危険です。
企業や団体についても、大手だから、有名だからというだけでは決してうまくいかないでしょう。
地上や都市農家のみなさん自身が、信頼できるパートナーを選ぶ力を付けなければなりません。
そのためにどうしたらいいのでしょうか。
まず、「ちょっとおかしい」「なんだか頼りにならない」と感じたら、別の専門家に話を聞いてみるとよいと思います。
いわゆる「セカンドオピニオン」です。
こういうと、「先に相談している相手を疑っているようで失礼ではないか」と思われるかもしれませんが、それはお人好しすぎます。
先に相談している相手には、セカンドオピニオンを取ることを伝えなければいいだけです。
ただし、セカンドオピニオンをとる場合、他の誰かの利益に関与していない、中立的な立場の専門家を選ぶようにしましょう。
また、金融機関や建設会社などとの打ち合わせの際、中立的な立場の専門家を同席させるのもよいでしょう。
提案される商品やスキームについて、その場でセカンドオピニオンをとることによって、簡単に落とせる顧客ではないと示すためです。
安易な提案やメリッーの少ない商品を避けることにつながります。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では、相続の相談を誰にするのかわからない人に向けて、失敗しないための以下の3つのポイントをご紹介しました。
- JAや銀行など金融機関、ハウスメーカーなど建設会社の説明は話半分で聞くこと。彼らの話には必ず裏があると考えよう。
- 普段、所得税や法人税の申告を依頼している税理士に相続税の相談をしても無駄。相続税専門の税理士や詳しい専門家を探す。
- セカンドオピニオンをとったり、打ち合わせに同席してもらったり、複数の専門家を上手に利用する。
これらのポイントを抑えながら、誰に相続の相談をするべきなのか、検討してみてくださいね。
また、話のなかにも出ましたが、アパートやマンションを建設するというのも選択肢の一つになります。
とはいえ、不安なのは「アパートやマンションを建てて失敗してしまったらどうしよう・・・」という点ですよね。
そこで知っておいてほしいのが、建設したアパートやマンションを売却するという手段もあるということ。
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